近年医学分野の中でも注目を集めている「再生医療」ですが、再生医療に用いられている培養上清液が美容にも効果的だということが分かってきています。
なぜ培養上清液が美容にも効果的なのでしょうか?

また、そもそも培養上清液とはどういったものを指すのでしょうか?
今回は、再生医療と培養上清液について詳しく解説していきます。

培養上清液とは?

まずは培養上清液についてご紹介しましょう。
培養上清液とは、人間の体内で様々な細胞に分化できる力を持った「幹細胞」を培養した際に使う液体を指します。
幹細胞を培養した後に残った液体を使っているため、一見不要なものと考えられるかもしれません。

培養液

しかし液体中に含まれている成分を見てみると、幹細胞の培養中に分泌された豊富なサイトカインや成長因子などの成分が含まれており、再生医療では幹細胞だけではなく培養上清液の活用も注目されています。

培養で使われる幹細胞というのは、脂肪由来幹細胞が使われていることが多いです。

脂肪由来幹細胞とは体内で活発的に活動しているものであり、脂肪や骨はもちろん軟骨や血管内皮、神経などあらゆる細胞になれる力を持っています。
これまで再生医療で活用される幹細胞は骨髄幹細胞でしたが、近年は脂肪由来幹細胞の方が注目されています。

なぜなら、骨髄幹細胞は骨髄近くにある細胞なので抽出するなら骨髄の近くからでないと抽出できません。
しかし、脂肪由来幹細胞は脂肪細胞の近くにあるため、脂肪がある部位であれば比較的どこからでも抽出できることになります。

利用のしやすさから脂肪由来幹細胞が注目されているのです。

培養上清液から期待できる効果

培養上清液を再生医療として活用すると、どんな効果が期待できるのでしょう?

アンチエイジング効果

老化

最も効果が期待されているのは、アンチエイジング効果です。
加齢によって肌の土台となっているコラーゲンやエラスチンなどの分泌が低下し、シワやたるみを生んでしまいます。

また、ヒアルロン酸の減少によって肌の潤いをキープする力が低下してしまい、乾燥しやすくなって余計に肌トラブルを招きやすくなってしまいます。

培養上清液には数々の成長因子を含むサイトカインが配合されており、活用することによって肌のターンオーバーが正常に作用し、美肌に重要なコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を分泌力を取り戻します。
そうすることで、歳を重ねても美しい肌を保つことができるのです。

このアンチエイジング効果は既にスキンケア用品にも活用されてきており、スキンケアメーカーからも多くの注目を集めています。
なお、効果は顔だけではなく全身の皮膚にも効果が期待できるため、例えば傷跡を修復する際に活用できます。

血管再生効果

血管

歳を重ねると血管の弾力性が衰えてしまい、高血圧・動脈硬化が発生しやすくなって心筋梗塞・脳出血を引き起こすリスクが高まります。

培養上清液は血管内皮細胞に生まれ変わることができるため、血管年齢の老化予防にも役立つと言われています。
血管が再生されて血流がスムーズに流れるようになれば、血管年齢の老化予防だけでなく様々な病気のリスク予防につながっていくでしょう。

神経細胞の修復効果

サイトカインによって神経細胞の修復を行うことができます。
神経細胞は人間の体にとって感覚を脳に伝えたり、逆に脳から神経細胞を通じて司令を出し、運動につなげたりすることから、重要な細胞です。

神経細胞が傷ついてしまうと、ある部位だけ動かなくなってしまうなどの後遺症につながってしまいます。
培養上清液に含まれるサイトカインには神経細胞を修復・再生する力を持っているため、例えば脳梗塞や脊椎損傷によって神経細胞が傷ついてしまった場合、後遺症を和らげるための治療として活用されます。

発毛効果

発毛効果

薄毛の要因は発毛を行う細胞が正常に機能していないことなどが挙げられます。
そこで、培養上清液を活用して頭皮の細胞を活性化させ、正常に機能させることで薄毛改善につなげることが可能です。

なお、既に再生医療を行っているクリニックの中には培養上清液を活用した薄毛治療を実施しているところもあります。
この他にも、老眼や歯の治療、ED、生活習慣予防、がん細胞の増殖抑制などといった効果が期待されています。

培養上清液は本当に安全なのか?

様々な効果が期待できる培養上清液ですが、やはり安全性に不安を感じている方は多いでしょう。
安全性に関して説明すると、幹細胞の培養上清液を使っても特に問題はありません。

細胞を培養する際に体内に近い環境を作り出すため血清を用いた培養が行われていました。
しかし、血清を用いた培地にはいくつもリスクが存在しています。

幹細胞培養上清液

例えば血清を用いることでウイルスなどの感染物質に汚染する可能性や細胞毒性因子が含まれている可能性、アレルギー反応が出てしまう可能性などが挙げられます。

これまでは牛や馬などから抽出した血清が用いられていました。
ただ、現在は数々のリスクを抱えていることから牛や馬から抽出した血清を使わない方法が取られています。

また、培養するための幹細胞に関しても、ドナーを集める際にエイズやウイルス、細菌に感染していないか、慢性疾患がないかなどを検査してから組織採取の検査を実施し、医薬品を作る時と同等の安全検査が行われます。

それぞれの検査機関によっても流れは異なりますが、多くの機関で実施されている原料の幹細胞を採取してからの流れは下記の通りとなります。

  • ドナーの適合検査
  • 外部からの汚染がないよう、外部から一切遮断された環境の中で幹細胞を採取
  • 抽出した幹細胞を培養施設に移し、GMP準拠のクリーンルームの中で培養作業を行う
  • 培養後、数日経過したら培養上清液を抽出
  • 抽出した培養上清液が安全かどうか医薬品GLP試験実施適正基準を用いて検査
  • さらに品質管理基準ガイドラインを用いて成分試験検査を実施し、リスクの高い成分が含まれていないか確認
  • 検査をクリアした培養上清液を各医療機関へ出荷

このような流れに沿って数々の検査をクリアしたものだけが出荷されているため、培養上清液の安全性はしっかりと確保されていると言えるでしょう。

培養上清を使った成功事例

培養上清を活用し再生医療を行うクリニックが増えているのは、その効果が徐々に明らかなものになっていることも起因しています。
リスクが低く効果が表れるのであればクリニック側も安心して取り入れられるのです。
では、培養上清を使った成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

名古屋大学による骨の再生

名古屋大学大学院 医学研究科 顎顔面外科学の研究グループが、培養上清を使って骨の再生に関する研究を実施しました。
元々名大医学部附属病院では幹細胞移植を用いた培養骨の開発を行っており、臨床応用も進められていたのですが幹細胞移植のための設備や培養にかかる費用、人件費などのコストが膨大となっていることから、名大医学部附属病院に限定してしまう治療となっていました。

しかし、幹細胞から分泌されている成長因子がパラクライン効果によって体内の幹細胞に働きかけ、組織再生を目指すという報告が発表されるようになってから幹細胞移植ではなく成長因子が多く含まれる培養上清を活用できるのではないかということから、この研究につながっています。

幹細胞移植を行わずに骨の再生ができるかどうかという問題でしたが、間葉系幹細胞(MSC)の培養を行ったところ、培養上清にIGF-1やVEGF、TGF-β1、HGFなどの成長因子が含まれていることが分かり、これをラットの頭蓋骨にある欠損部に移植したところ、新たに骨が作られるようになり、幹細胞移植と同じ、もしくはそれ以上の骨再生効果があったとしています。

幹細胞を移植させるよりも培養上清を活用した方が治療の安全性は大きく向上し、さらに細胞移植に伴っていた課題(コスト面や細胞移植の難しさ)などが緩和され、多くの医療現場でも活用できることが判明しました。
この結果はあくまでも骨再生医療に関する内容となっていましたが、培養上清を使った再生医療にとって良い結果をもたらしたと言えます。

培養上清と再生医療についてご紹介してきました。

これまでは幹細胞を移植しないと再生医療は実現できなかったのですが、培養上清に含まれるサイトカインによって幹細胞移植と同等以上の効果が期待できるということが分かりました。
様々な効果が期待できる再生医療は、既に成長因子が含まれているスキンケア用品も販売されていたり、クリニックでも治療が行われていたりするため、今後私達の生活の中でより身近なものになっていくと考えられます。

特に、肌のアンチエイジングやケガの修復・リハビリ、病気予防を検討されている方は、ぜひ培養上清と再生医療に注目してみましょう。


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