平成28年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、これまで曖昧だった再生医療の治療提供が確立し、きちんと施設認定されていない医療機関からは再生医療を利用できなくなりました。
これにより、再生医療に分類される「サイトカイン療法」の安全性が確立されたと言えます。

サイトカイン療法によって様々な効果に結びつきますが、中でも美容の観点からサイトカイン療法を活用する方が増えてきています。
そこで今回は、サイトカイン療法と美容の関連性についてご紹介していきましょう。

美容効果

サイトカイン療法に注目しているという方や、サイトカイン療法について詳しく知りたいという方はぜひ参考にしてみてください。

サイトカインの特徴

そもそもサイトカインがどういったものなのか知っておく必要があります。
サイトカインは、細胞から他の細胞へ情報を伝達するために活用されるタンパク質の総称を指します。

サイトカイン

例えば、脳から体の各部位に司令が出されることで各部位の細胞が活発化し動くことができます。
その情報を伝える役割を果たしているのが、サイトカインなのです。

ホルモンに似た働きをするタンパク質だという認識で間違いはないでしょう。
サイトカインはこれまで長きに渡り研究が進められてきました。

特に分子生物学が発展したことで分かるようになった分野になります。
20世紀初頭には既に赤血球の生成を促進させる因子があることは分かっていたのですが、その後はなかなかサイトカインについて調べられていませんでした。

しかし、1970年代に入ると遺伝子工学が進み、バイオ分野が調べられるようになったことで、サイトカインの研究が進んでいったのです。

そんなサイトカインは多くの種類を有しており、それぞれファミリーごとに分類できます。
サイトカインがどのように分類されているのか、一部ご紹介していきましょう。

クラスⅠ

造血因子や成長ホルモンなどが含まれます。
主にSTAT因子(シグナル伝達兼転写活性化因子)の活性化を行います。

クラスⅡ

インターフェロン系やIL-10、IL-20などが含まれます。
こちらもSTAT因子を活性化させます。

クラスⅠとクラスⅡは免疫機能に関連しているものが多く見られます。

TGF

TGF-βやBMPなどが含まれます。
SMADを活性化させ、細胞の分化や増殖抑制、アポトーシス(細胞死)や細胞外マトリックスの生成などを行います。
細胞の増殖を抑制する機能を持っているため、もしTGF(特にTGF-β)のシグナル伝達に異常をきたしていると、大腸がんや膵臓がんといった発がん作用につながると言われています。

TNF

TNFαやFasリガンド、RANKLなどが含まれており、カスパーゼ(細胞にアポトーシスを発生させるシステインプロテアーゼの一群)の活性化につながります。
自発的なアポトーシスをTNFが誘導することで、免疫性の恒常性維持が可能です。

ケモカイン

IL-8やMCP、MIPなどが含まれています。
主に内因性の白血球走化性や活性化作用を持っており、約50種類にも及ぶケモカインがそれぞれ脳梗塞や動脈硬化、アレルギー、AIDSなどに対し重要な役割を果たしていることが分かっています。

増殖因子

EGFやVEGF、Angなどが含まれている増殖因子は、チロシンキナーゼ受容体に働きかけます。
VEGFやAngは主に血管を形成するために必要な因子であり、血管内皮細胞を新たに作り出すためにも欠かせないものになります。

Wnt

Wntは1~20までの種類があり、βカテニンを制御する特徴を持っています。
主に初期発生における役割を果たしているのですが、Wntの関連分子に生じた変異から腫瘍が形成されることから、今後がん化を防ぐための因子になるのではないかと注目を集めています。

それぞれの分類を見てみると、細胞に様々な働きかけを行うことで免疫や細胞の分化などを引き起こすような役割を果たしていることが分かります。

サイトカイン療法がなぜ美容にも効果的なのか?

上記で紹介したように、サイトカインは特に免疫に関連していることが分かります。
疾病予防としてサイトカインを活用した治療法は既にクリニックで取り入れられているのですが、なぜサイトカイン療法が美容にも効果的だと言えるのでしょうか?

美容の観点から見ると、サイトカインは細胞生成を促進させる増殖因子が強く関連しています。
増殖因子の中にはEGFと呼ばれる上皮成長因子というものがあります。

これは53個ものアミノ酸から構成されているタンパク質で、上皮細胞の生成を促す役割を果たしています。
上皮細胞というのは肌にある表皮や内臓の粘膜を構成する上皮、外分泌腺にある腺房細胞、内分泌腺にある腺細胞などを合わせて上皮細胞と言います。

EGFが受容体と結合すると上皮細胞に対して増殖のシグナルを発し、古くなった細胞の生まれ変わりを促します。
つまり、肌のターンオーバーはEGFによって正常化することができるのです。

ターンオーバー

EGFによって上皮細胞のターンオーバーが進んでいくと、古い細胞がどんどん押し出されていき、新しい細胞が表面化されていきます。
これによって肌の生まれ変わりが完了するのです。

シミやシワなどの肌トラブルも、EGFによるターンオーバーの促進で改善が見込めるでしょう。

サイトカイン療法では、こうした肌に関連する細胞の生成を促進させるサイトカインを活用し、肌の生まれ変わりや健康的な美容を目指すことができます。
そのため、サイトカイン療法と美容の関連性は非常に高いのです。

美容のサイトカイン療法で活用される増殖因子

美容におけるサイトカイン療法で活用されるのは、何もEGFだけではありません。
他にどんな増殖因子が肌に良い効果をもたらしているのか、それぞれご紹介していきましょう。

FGF

線維芽細胞増殖因子と呼ばれるFGFは、主に線維芽細胞の増殖を促しています。
線維芽細胞が増えるとコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの生成力が増加し、健康的な美肌を目指せるでしょう。

aFGF

EGFと同様に上皮細胞へ生成促進と、コラーゲンやエラスチンなどを生成している線維芽細胞に、これらの生成を促進するよう働きかけています。
肌の土台から美肌を作り上げるのに必要な増殖因子です。

表皮

VEGF

VEGFは血管内皮細胞増殖因子と言って、主に新たな血管の形成に関与している増殖因子です。

血管と美容は一見関係ないように見えるかもしれませんが、古い血管よりも新しい血管の方がスムーズに血液が流れ、肌に栄養素をたくさん運べるようになります。
逆に血管が詰まりやすくなっていて肌に栄養素が届かなくなると、ターンオーバーが低下し、肌のくすみやシミ・シワにつながってしまいます。

TGF-β

TGF-βはTGFファミリーに分類されますが、細胞分化に必要不可欠な因子です。
また、細胞分化だけではなく抗炎症作用も持っているため、肌荒れ状態を改善したい時に役立ちます。

HGF

肝細胞増殖因子として知られるHGFですが、その他にも再生修復が可能な因子としても活躍しています。
体の内側から美しい肌を目指すなら、増殖因子の活用は欠かせません。

現在は少しずつ増殖因子を取り入れたコスメ商品も増えてきています。
しかし、より確実に、早期に効果を出したいのであれば、クリニックでのサイトカイン療法がおすすめです。

サイトカイン療法はどんなことを行うの?

クリニックで行うサイトカイン療法と言われても、どんなことを行うのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか?
サイトカイン療法ではどのようなことが行われるのかと言うと、基本的にはサイトカインが豊富に含まれた培養上清液を皮膚に注入するだけで完了します。

培養液

注射を肌に挿すだけで終わるため、傷跡が残るということもありませんし、施術も短時間で終わります。
サイトカイン療法を行った当日からお風呂に入ったり洗顔をしたりすることもできるので安心です。

ただし、場合によっては内出血を引き起こす可能性があることをあらかじめ理解しておきましょう。
内出血自体は1~2週間程度でなくなるので心配はありません。

幹細胞培養上清液

サイトカイン療法で注入する培養上清液ですが、これは通常の細胞とは異なり、自ら分化できたり別の細胞へと分化することができる「幹細胞」を培養した時に使用した液体になります。
幹細胞が培養された後の培養液には豊富なサイトカインが含まれており、その液を注入することでサイトカインの機能を余すことなく取り入れられます。

培養液というと何となく安全でないのでは?と思われてしまうかもしれませんが、人体に影響のある液体を使ってしまえば培養もできません。
そのため、培養液を人体に注入しても特に問題はないのです。

しかも幹細胞の培養自体が厳しい衛生管理の元で行われているため、安全性の高い培養上清液となっています。

サイトカイン療法は肌の内側から、健やかで美しい肌を目指すための治療方法です。
まだ導入している美容クリニックは少ないですが、都心部を中心に増えてきているので、ぜひ自分に合ったクリニックを探してみてはいかがでしょうか?


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