「いつまでも美しい肌、健康な体を維持したい」という美意識の高い方の間で、「サイトカイン療法」が注目を浴びています。
初めて聞いたという人もまだ多いと思いますが、「サイトカイン療法」は美容だけでなく、がん治療などにも使われている安全性の確立した最先端医療の一つです。

今回はまだ「サイトカイン療法」のことを良く知らないという方のために、美容における効果、毛髪の再生や免疫力再生など「サイトカイン療法の優れた効果」などについて紹介します。

サイトカイン療法とは?

サイトカイン療法は人間が持っている再生能力や回復力を利用した「再生医療」の一つです。
エイジングや免疫再生などに効果がある治療法であり、細胞レベルで行う最新のアンチエイジング治療といわれています。

幹細胞培養上清液

「サイトカイン」とは

まず、「サイトカイン」とは何かという基本的な知識を学んでおきましょう。

「サイトカイン」とは:細胞から分泌されるたんぱく質であり、細胞間の情報伝達を行う生体内物質のこと。

主に炎症反応や免疫反応などの生体防御に関わる反応に関係する場合が多いですが、細胞が成長する過程(細胞分化)、細胞増殖、細胞死、傷の治癒などに関わる部分にもサイトカインが登場します。

たとえば、有名なものでは、インターフェロン(IFN)があります。

インターフェロンはウイルスが侵入した場合やがん細胞などの異物が侵入したときに分泌されるサイトカインです。
医薬品に抗ウイルス作用を応用して、肝臓病やがん、白血病などの治療に使われています。

このような病気の治療だけではなく、サイトカインによる細胞分化や再生などの能力を応用した再生美容医療が日本においても行われ始めています。

サイトカインと幹細胞ってどう違う?

サイトカイン療法と切っても切り離せないのが幹細胞です。

幹細胞
私たちの体は約37兆個以上もの細胞から成り、日々細胞は増殖および死滅などを繰り返して入れ替わっていきます。
この生まれてくる細胞のもとの細胞となるのが「幹細胞」で、細胞の赤ちゃんのようなものです。
幹細胞は様々な細胞に分化することができ、自ら複製する能力も備えています。

サイトカイン療法では、サイトカインをつくり出すために幹細胞を使用。幹細胞を培養する過程でサイトカインが生成されます。
サイトカインは培養液の上清み液に分離することができ、分離した上澄み液をサイトカイン療法では使われているのです。

サイトカインが持つ再生効果

サイトカイン療法は「がん治療」「美容医療」「免疫医療」「毛髪再生」など、様々な目的に応用されています。
そこで特に注目されているのが「再生効果」。

再生効果をもつサイトカインのことを「成長因子(Glowth Factor)」と呼びますが、成長因子の中にはホルモンに分類されるものもあります。
「成長因子」は名前の通り、細胞の分化・増殖などを促進し、生体や組織の成長に携わります。「細胞増殖因子」「増殖因子」と呼ばれることもあり、ほぼ同義です。

分化とは、細胞が成長することを意味します。
もともと、細胞は幹細胞といわれる細胞から誕生し、そこに様々な因子が関わることによって各臓器や組織の細胞、血球細胞などに成長していくのです。

全身

具体的には次のような種類があり、それぞれに異なる働きを持っています。

EGF(epidermal growth factor):上皮細胞成長因子
細胞表皮においてシグナルを出して皮膚(上皮)のターンオーバーに関わる

FGF(fibroblastic growth factor):線維芽細胞成長因子
<a型>上皮細胞の増殖および線維芽細胞からコラーゲン、ヒアルロン酸などの産生を促す
<b型>筋細胞および上皮細胞の細胞増殖を促す

KGF(keratinocyte growth factor):ケラチノサイト成長因子
毛髪の元になる毛母細胞に作用して増殖を促す、発毛を促す

IGF(insulin like growth factor-1):インスリン様成長因子
細胞の増殖を促す、皮膚再生、シワや張りなどの改善

VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮細胞成長因子
血管の新生を促す、皮膚の再生、創傷治癒、発毛を促す

PDGF(platelet derived growth factor):血小板由来成長因子
組織が傷つくと放出され、細胞遊走と細胞増殖によって組織を修復、治癒する

TGF-α(transforming growth factor):トランスファーミング成長因子
コラーゲンの合成を促進、シワの改善、創傷治癒

サイトカイン療法で期待できる効果

サイトカインには様々な種類がありますが、全てのサイトカインが臨床的に応用されている訳ではありません。
具体的にクリニックなどで受けられるサイトカイン療法では、どのような治療が可能になるのでしょうか?

培養液

サイトカインは細胞の活性化を促進する

サイトカイン療法では、細胞の活性化や再生を促すことができます。

たとえば、火傷をして皮膚に損傷を負ったときに、今までの治療では自分の他の部位の皮膚を移植する治療が行われてきました。
しかし、サイトカイン療法を用いた再生医療であれば、皮膚の元となる幹細胞を導入することで肌細胞の再生が可能になるのです。

肌細胞

美容においても従来の美容医療やコスメなどでも叶えられなかった、エイジング対策を可能にします。
たとえば、ボトックス注射やヒアルロン酸注入などの補うだけの治療ではなく、サイトカイン療法は自身の再生能力を促して若返りを可能にしてくれる治療なのです。

具体的なサイトカイン療法の種類と効果

クリニックでは主に次のようなサイトカイン療法を受けることができます。
具体的に使われているサイトカインの種類も異なるので違いを知っておきましょう。

肌の再生(シミ、シワ、美白、ニキビ、アトピー性皮膚炎)

これまでにもシミやシワ、美白などの皮膚における美容医療、ニキビやアトピー性皮膚炎などの皮膚のトラブルに対する治療は行われてきましたが、サイトカイン療法では肌を細胞レベルから再生することができます。具体的には紫外線を大量に浴び続けたことによりできてしまったシミ、加齢によるシワなどを改善する効果などが期待できます。

美白・シミに対するサイトカイン治療

ターンオーバー

紫外線に当たると、自分の肌を紫外線から守るために黒色の色素であるメラニン色素が生成されます。
このメラニン色素はチロシナーゼという酵素により産生されて、周りにあるケラチノサイトに貪食されて肌表面の角質層まで上がっていきます。

表面に上がってきたメラニン色素は正常な肌であれば新陳代謝で垢と共に剥がれ落ちていきます。
しかし、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)が遅れたり、過剰にメラニンが産生されたりするとメラニン色素の消失が遅れ、色素が残ることで「シミ」となるのです。

ターンオーバー

サイトカイン治療ではサイトカインを導入することにより、肌表面のターンオーバーを促していくことでシミを防ぎ、改善する効果が期待できます。
サイトカインが幹細胞を刺激することで、肌が本来もっている再生機能を復活させることもできるのです。

使用されるサイトカインの種類は、EGF、IGF、FGFなどの様々な成長因子があります。
治療では1種類だけに限らず、複数を混合して用いることが多いです。

シワに対するサイトカイン治療

乾燥

シワには「乾燥ジワ」や「表情ジワ」、「加齢ジワ」などがありますが、いずれも乾燥または肌の弾力性の低下が主な原因です。
弾力性が低下する原因としては、加齢や紫外線などがあります。真皮層にあるコラーゲンが減少することで、弾力性が損なわれてシワができるのです。

表皮

シワの治療として今までにもボトックス治療やヒアルロン酸注入などがありましたが、サイトカイン療法は新たな一手として注目されています。

サイトカインを肌に注入することで眠っていた幹細胞を真皮細胞へと分化させて、肌の弾力性を高めることができるため、シワ改善が見込める治療法です。
TGF-α、IGF-1、PDGFなどの成長因子にシワを改善する効果があります。

ニキビに対するサイトカイン治療

ニキビ

サイトカイン療法には皮膚再生や創傷治癒などの効果があるため、ニキビの改善やニキビ痕の治療などにも応用できます。

アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患への応用

アトピー

アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの皮膚の病気の治療にもサイトカイン療法を用いることができます。
現時点では保険適応は認められていない治療法であるため自費診療となりますが、サイトカインを配合した「サイトカイン軟膏」を用いた治療が行われています。

毛髪の再生(薄毛、発毛)

薄毛

髪の毛が薄くなってきた、抜け毛が多い、髪の毛が細く弱っているなどの悩みを抱えている方は多いです。
増毛法やウィッグなどで対処することもできますが、本来の自分自身の髪の毛と比べると、どうしても違和感があり、不自然になりやすいというのが問題でした。

自分自身の毛髪の発毛を促すことで、毛量を増やすことができるのがサイトカイン療法による発毛治療の最大のメリットといえます。

注射

頭皮に発毛効果のあるサイトカインを注入すると髪の毛の細胞である「毛母細胞」に作用。
毛根にある毛乳頭の活性、毛包の再生、髪の毛の成長を促すことで発毛を促進します。

女性の薄毛および男性のAGAなど、薄毛に悩む人にとっての救世主的な治療法になるといえるでしょう。

免疫力の再生(疲労回復、アレルギー症状、更年期障害、ダイエット)

サイトカイン療法は美容だけでなく、疲労回復、アレルギー、更年期障害、ダイエット、肩こり、認知症など様々な症状、病気の治療にも有用です。
健康面においてどのような有用性が期待できるのか、具体的に紹介します。

疲労回復効果

疲労を感じるのは、脳がサイトカインやホルモンを感知していることが原因だとされています。

脳は常にサイトカインの量をモニタリングしており、異常値を感じると倦怠感を起こさせます。
疲労感や倦怠感を感じさせることで「休みなさい」と司令しているのです。

疲労

サイトカイン療法には炎症を抑える効果もあるため、慢性的な腰痛や肩こりなどの改善効果もあります。
慢性疲労症候群や神経障害などへの治療効果も期待できます。

アレルギー症状の改善

国民病ともいわれる花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患はなかなか治すことが難しい病気です。
抗アレルギー薬やステロイド薬を使った治療が主流ですが、止めると症状が再発しやすかったり、長期使用による副作用が合われたりなどの問題もあります。

アレルギー

アレルギー治療においては、すでにサイトカイン阻害薬が臨床的に用いられていることもあり、サイトカインとアレルギーの発生には深い関わりがあることが分かっています。
サイトカイン療法をアレルギー疾患の治療に応用することができれば、アレルギー治療は大きく変わることでしょう。

更年期障害

更年期障害

女性ホルモンの機能低下による諸症状を更年期障害といいます。
その特徴は女性ホルモンの低下などによる顔面のほてり(ホットフラッシュ)や発汗、うつ症状などが現れます。

それはエストロゲンの減少によるものとされており、サイトカイン療法でサイトカインを体内に補充することで、自律神経やホルモンを活性化し、更年期障害の諸症状を改善。
人間本来の健康を取り戻すことができます。

ダイエット

ダイエット
脂肪細胞はホルモンのような物質を分泌します。
それが「アディポサイトカイン」です。アディポサイトカインには人間の体にとって良い働きをする因子と、悪い状態を招く因子があります。

善玉である「アディポネクチン」は糖尿病や動脈硬化を抑える働きがあり、「レプチン」は食欲を抑えることが役割です。
一方、悪玉である「PAI-1」は血栓をつくりやすくし、「TNF-α」と「MCP-1」はインスリンの働きを妨げます。

肥満によって肥大化し数を増やした脂肪細胞は、分泌するアディポサイトカインのバランスを変化させます。
それが原因で善玉は減り、悪玉ばかりが増加。

インスリンが分泌されても血糖値が下がりにくく、高血糖にもつながります。
同じ血糖値に対してインスリンがたくさん必要になるため、脂質代謝などに影響を与えるのです。つまり、サイトカイン療法で脂肪細胞を元に戻してあげることで、体内に蓄積する脂肪を抑えられます。

認知症(アルツハイマー型認知症)

アルツハイマー型認知症認知症、アルツハイマー型認知症といわれる脳の病気にもサイトカイン療法は適応されます。
細胞レベルでの分化を促進することで、脳細胞や脳神経の働きを改善する効果が期待できるためです。脳梗塞後の後遺症の改善にも用いることができます。

サイトカイン療法の方法

では、実際にサイトカイン療法はどのように行われるものなのでしょうか?

クリニックや治療目的により方法に違いはありますが、「ヒト乳歯髄幹細胞由来サイトカイン療法」などが主流となっています。

サイトカインを体内に導入するときには、局所注射による「メソセラピー」(肌、関節、頭皮など)、「イオン導入(無針メソ)」「点滴による全身投与」「点鼻」「経皮(スキンケア)」などがあります。
どのように作用させたいかによって、部分的な使用か、全身的に投与するかを区別して使用します。

幹細胞培養上清液

脂肪幹細胞由来のサイトカイン療法

現在、美容や医療で最も使われている、人の皮下脂肪から採取した脂肪幹細胞。
その幹細胞から分泌される脂肪幹細胞由来の培養上清液には、細胞の再生化に効果的なサイトカインなどが数多く含まれています。

 

従来は骨髄などから幹細胞を採取していましたが、その骨髄よりも100~1000倍もの幹細胞を得られる脂肪組織が注目されました。脂肪幹細胞は採取量が多いだけでなく、皮下脂肪から得られるため採取が容易で、安全性も高いとされているのです。

臍帯幹細胞由来のサイトカイン療法

臍帯

臍帯(さいたい)とは、赤ちゃんのへその緒のことです。
人間は胎児から成長する過程で、加齢とともに徐々に幹細胞の量が減少します。逆に最も幹細胞の量が多いのが、胎児の頃です。

臍帯由来の幹細胞はアンチエイジングなどの若さに関わるサイトカインを多く含んでいることが分かっています。
他人の臍帯を用いるため、品質が悪い海外産などでは感染症やアレルギーのリスクを伴いますが、国内生産で安全性を管理されているものであればそのリスクは極めて低くなっています。

歯髄幹細胞由来のサイトカイン療法

歯髄由来のサイトカインを用いた治療法も近年注目を集めています。
歯髄と言われる歯の内部には幹細胞が多く存在します。歯髄細胞はガン化しにくく、非常に活発で良質な幹細胞を含んでいます。

特に10歳以下の乳歯には幹細胞が豊富にあり、それを利用したのが「歯髄幹細胞由来のサイトカイン療法」です。
自身の乳歯が入手不可能であっても、子供や孫などの血縁関係にある人の乳歯を使う「自家」と、他人の乳歯を使う「他家」から選ぶことができます。

サイトカイン療法の安全性とリスク

サイトカイン療法を受けようかどうか迷っているという場合に、気になるのが安全性やリスクではないでしょうか。
安全性やリスクについては十分に納得した上で治療を受けることをおすすめします。

医師のカウンセリング

サイトカイン療法の安全性

他人の細胞などを移植する場合には免疫拒絶反応やアレルギーなどの危険性を伴いますが、自分自身のサイトカインを用いる場合にはそのリスクは非常に低くなります。
サイトカイン療法の場合、サイトカインの培養上清液には幹細胞がほぼ含まれないため、がん化するリスクも低いと考えられています。

サイトカイン療法のリスク

サイトカイン療法は安全性が高い治療法で、すでに臨床的に実用化されている治療法も多く存在します。
しかし、まだ実用歴が長いとはいえない部分もあり、予期せぬ副作用が起こる可能性はゼロでありません。

万が一、治療後に今までとは違う変化や異常を感じた場合には、早めに主治医に相談することをおすすめします。

サイトカイン療法に関するQ&A

サイトカイン療法を受ける上で気になることはありませんか?よくある質問をまとめてみました。
治療を受ける前に確認して不安を解消しておきましょう。

Q:サイトカイン療法では今までの美容医療と何が違いますか?

A: サイトカイン療法では、成長因子などの働きにより細胞レベルから肌を再生、改善することができます。これまでの治療ではあまり効果が得られなかった症状も改善できる可能性をもつ治療法です。

 

Q:効果はすぐに得られますか?持続期間は?

A:施術の直後から肌のハリや透明感のアップなどの効果を実感できる人も多くいます。また、小ジワの改善やシミや肝斑などが目立ちにくくなる、ニキビ痕の改善などの効果も次第に実感できるようになります。

 

Q:治療はどこで受けても同じですか?

A:サイトカインなどの質がクリニックや専門機関により異なることがあるため、場所によって効果に差が出る場合があります。

 

Q:どれくらいの費用がかかりますか?

A:どのようにサイトカインを作成するか、また導入方法などによっても費用が異なります。1回あたり数万円の場合もあれば数十万円する治療もあります。詳しくは医療機関に事前に確認しておきましょう。

 

Q:サイトカインを作成するのにどれくらいの期間かかりますか?

A:脂肪組織を採取してから、約1ヶ月程度かかることが多いようです。

サイトカイン療法は美容面での優れた効果はもちろんのこと、アレルギーや認知症などの病気の治療にも応用される期待値の高い治療法です。

人間が本来もっている自己再生能力を生かした治療であり、今までの治療では叶えられなかったような次元の治療も可能にしてくれるかもしれません。
現時点ではまだ実用化されていない治療法もありますが、すでに臨床的に実施されて効果が確認されている治療法もあります。

ぜひ、あなたもサイトカイン治療をご自身の美容や健康のために取り入れてみてはいかがでしょうか?


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